reportレポート
コラム
ソーラーシェアリングに追い風
政策的バックアップ強まる
農地転用の規制を緩和。地域内消費モデルに補助金も!
農林水産省が2018年5月、ソーラーシェアリングの促進策を発表した。環境省も2018年度より、農林水産省と連携して、ソーラーシェアリングの普及を後押しする新事業をスタートさせた。国も『第5次 環境基本計画』(2018年4月閣議決定)において、ソーラーシェアリングの推進を明確に打ち出した。いま、ソーラーシェアリングには、これまでにない追い風が吹いている。
一時転用許可期間が
最大10年間に延長される
農林水産省が5月に発表した促進策は、農地転用許可に関する制度改正と優良事例の紹介などからなる。その最大の目玉は、農地の一時転用の許可期間が大幅に延長されたことだ。これまでの一律3年以内から、一定の条件を満たせば最大10年まで許可されることになった。
ソーラーシェアリングを行うためには、太陽光パネルを支える支柱の基礎部分の土地について、農地の一時転用許可を得なければならない。しかし、従来、その許可期間は3年という短いもので、これがソーラーシェアリング導入の足枷ともなっていた。発電した電力をFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)で買い取ってもらえる期間は20年間であるため、一般的に太陽光発電事業は最低20年間の継続を前提に計画される。そもそも3年程度では、発電設備などの導入コストを回収することは不可能だ。
とはいえ、これまでも3年ごとに再許可を得ることはできたので、それを見込んでソーラーシェアリング導入は進められてきた。だが、20年の間には6回もの再許可を得なければならず、事前に再許可が約束されているわけでもない。万が一、再許可が認められなければ、もうソーラーシェアリングを継続することはできない。
このことは、金融機関から融資を受ける際にも大きなネックとなる。3年ごとに事業継続リスクがつきまとう計画に対して、金融機関が融資を渋るのも致し方ないところだろう。
しかし、これからは違う。一時転用許可期間が最大10年になったということは、まずは10年間の事業継続が認められるということであり、FIT買取期間中に必要な再許可が1回だけで済むということだ。ソーラーシェアリングの事業継続リスクが、かなり減ったといって良い。このことによって、ソーラーシェアリングに対する金融機関の評価が変わり、資金調達がしやすくなるものと期待される。
荒廃農地の活用などが
一時転用10年の条件
10年の一時転用許可期間が認められるためには、従来からの要件に加えて、次の3つのいずれかの条件を満たしていなければならない。
- 担い手が所有している農地または利用権等を設定している農地で、当該担い手が下部農地で営農を行う場合。
- 農用地区域内を含め荒廃農地を活用する場合。
- 農用地区域以外の第2種農地または第3種農地を活用する場合。
なお、この前提となる従来からの要件とは、2013年3月に農林水産省が発表した通達「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」等によるもので、具体的には以下の通り。
- 営農の適切な継続(収量や品質の確保等)が確実であること。
- 農作物の生育に適した日照量を保つための設計となっていること。
- 簡易な構造で容易に撤去できる支柱であり、農業機械等の利用が可能な高さ(2m以上)や空間が確保されていること。
- 周辺農地の効率的な利用に支障がないこと。
- 下部農地で栽培された作物の単収(面積あたりの収穫量)が、地域の同一作物の平均的な単収より2割以上減収しないこと、等。
こちらの要件に関しては、すべてを満たしていなければならず、一時転用許可期間に関わらず、今後ともソーラーシェアリングを行うための大前提となる。
なお、農林水産省では、各地域の地方農政局に「農山漁村再生可能エネルギー相談窓口」を設けて、ソーラーシェアリングに関する問合せに対応している。優良事例の紹介などもしてくれるので、気軽に利用してみよう。