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コラム

祝!アースライズ50周年 「宇宙船地球号」の時代

祝!アースライズ50周年 「宇宙船地球号」の時代

1968年12月24日は人類にとって特別なクリスマスイブでした。
アポロ8号が、月の地平線からのぼる地球=地球の出(Earthrise)の写真を世界中に届けたのです。今からちょうど50年前の有名なこの写真は、後にライフ誌で「20世紀を代表する100枚の写真」の1つとして取り上げられました。

人類が月から地球を見てたった50年。人類10万年の歴史からすれば、人類が「地球」という存在を認識してから、ほんの一瞬と言えるかもしれません。
僕は1964年生まれで、僕が生まれた時には人類は一部の宇宙飛行士以外は、地球の画像を見たことがなかったわけです。
リン・ツイストは「地球」という意識が共有された瞬間、人類の「集合意識」は変化を始めたと考えました。

「この瞬間、私たちはシステムの一部である状態から抜け出し、シフトしたのだ。地球の美しさ、そのかけがいのない完全さがわかるほど、過去のシステムの外に飛び出したのだ。ここから地球に宿るすべての生命にとってまったく新しい世界が開いたのだ。」(リン・ツイスト『ソウル・オブ・マネー』より)。

ベトナム戦争に対する反戦運動が起こり、地球環境や社会問題に対する動きが世界中で始まりました。15ヶ月後には世界初のグローバルな環境運動アースデイが始まり、アメリカには「環境省」が設置されました。

アポロ8号から地球に届けられた「アースライズ」。

バックミンスター・フラーによる「宇宙船地球号」という考え方が広がったのもこの時期です。地球から月までは約38万km。地球から月に行き、再び地球帰還までのミッションは約8日間。宇宙船の中には空気、水、食料、燃料を積んでいくわけですが、このどれが欠けても生存できません。地球という惑星も「アポロ宇宙船」と同じように「空気」「水」「食料」「エネルギー」のどれが欠けても人類は存続できません。フラーは地球上の資源の有限性や、資源の適切な使用について語るため、地球を閉じた宇宙船とたとえたわけです。

この4年後にローマクラブが「成長の限界」のレポートを発表しました。人類文明がこのままだと100年以内に「限界」に達するという衝撃のレポートでした。著者のひとり、環境学者ヨルゲン・ランダースによると、現在においてもこの危機は回避されておらず、今後大きな変化がなければ、やがて人類は地球の物理的限界を超え危機を迎えると警告しています。

地球でもっとも基本的な法則は「充分の法則」であると、「成長の限界」の著者ドネラ・メドウズは語ります。惑星のすべての創造物は、学び、成長し、多様化し、進化し、驚くべき美しさと、斬新さをつくりだすけれど、それも絶対的な範囲の中で生きている。成長を求めるのではなく、より深め、循環させること。「宇宙船地球号」のポイントは、われわれの全ての源は太陽からやってきて、この地球において循環させ、共有することにあります。ソーラーシェアリングはその全体性に気づくための試みといえます。
フラーいわく「地球を包括的・総合的な視点から考え、理解することが重要であり、そのために教育や世界のシステムを組みなおすべき」。そしてそれは今、起きつつある変化の本質なのです。

たにざきてとら●放送作家/京都造形芸術大学教授。1964年、静岡生まれ。環境・平和・アートをテーマにしたメディアの企画構成・プロデュースを行う。価値観の転換(パラダイムシフト)や、持続可能社会の実現(ワールドシフト)の発信者&アーティストとして活動している。主な企画構成は「素敵な宇宙船地球号」(テレビ朝日)、「アースラジオ」(InterFM)、「里山資本主義CAFE」(NHK WORLD)、環境省「森里川海」映像など多数。アースデイ東京などの環境保護アクションの立ち上げや、国連 地球サミット(RIO+20)やSDGsなどへの社会提言・メディア発信を行う。ピースデー・ジャパンの発起人のひとりでもある。


出典:EARTH JOURNAL(アースジャーナル)vol.06 2018年
販売サイト(https://earthjournal.jp/information/33791/

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