ソラシェア総研が展開する次世代農家のためのプラットフォームSSF

reportレポート

取材 KTSE合同会社 斎藤 広幸

ソーラーシェアリングの導入で兼業農家から専業農家へ

パネルの角度を自動で変える「スマートターン」システムが稼働する。
発電効率を高める「スマートターン」を共同開発

「スマートターン」システムは、パネルを動かすことで発電効率を高めようというもの。太陽の光に反応して追尾するのではなく、市販のアクチュエータ(※)をセットし、時間によって自動で回転する仕組みになっている。強風など悪天候時は、手動でパネルを水平に設定することで、風の影響を最小限にすることも可能だ。さらに下の作物が日射不足になった場合には、角度を変えて太陽光を当てることもできる。いずれも、営農を重視したソーラーシェアリングならではの技術といえる。 
しかし、斎藤さんらが手作業で開発したスマートターンには、まだ改良の余地もある。雪の多い東北地方でこのシステムを使うのは、斎藤さんの農地が初めて。2016年3月に稼働、初めての冬には雪が30センチほど積もり、自動制御ができなくなった。そのため冬場の発電量が落ちてしまったのだ。
とは言え、天候などの変化に大きく左右される農業の不安定さに比べれば、基本的には手のかからない発電は遥かに順調だといえる。農業については今年、悪天候が続き稲が倒れてしまったり、去年は大豆がイノシシの被害にあったりということもあった。「実際に手がけてみたことで、農業を継続していくにはソーラーシェアリングによる安定収入が欠かせないものになると確信しました」と斎藤さんは手応えを口にする。

※アクチュエータ:油圧や電動モーターによって、エネルギーを並進 または回転運動に変換する駆動装置のこと。

パネルの角度変更は、状況の応じて手動操作でもできる。
 斎藤さんは、自宅にも太陽光発電を自前で設置している。
荒れ地を農地に
地域活性化につなげたい

会社を辞めてこの事業に専念するようになり、今ではある程度収入も安定し、農家としてやっていく見通しが立ってきたという。現在稼働しているソーラーシェアリングは5ヶ所だが、今後はさらに別の田畑で5ヶ所を増設、今年度中に合計で454.1kWの容量に増やす予定にしている。
また2017年には、遊休地をコンニャク畑として蘇らせ、同時にコンニャクを川俣の名産にすることを目指す「コンニャク川俣」という生産グループに入会。既に栽培も手がけており、その上にもソーラーシェアリングを設置する予定だ。多くの太陽光を必要としないコンニャクは、ソーラーシェアリングに適した作物とされている。
「遊休地が畑になったことで、周辺住民の方からはありがたい、というお声を頂いています。ソーラーシェアリングとあわせて増やしていくことで、地域活性化にもつなげていきたい。“川俣と言えばコンニャクとソーラーシェアリング”というくらいになれば良いですね」(斎藤さん)。
ソーラーシェアリングがなければ、専業農家なんて考えられなかったと語る斎藤さんは、地域の将来もしっかりと見据えている。

KTSE発電所
場所福島県川俣町
設備容量219.2kW
土地面積5850㎡
導入年月日2016年3月(最初の設備)
導入費用約7000万円
年間の売電収入約1250万円
パネル下で育てている作物コメ、大豆
※2017年9月現在5ヶ所合計
Information

KTSE合同会社
TEL:024-565-5099


出典:EARTH JOURNAL(アースジャーナル)vol.05
販売サイト(https://earthjournal.jp/information/33390/

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